アルプスの防人

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IMG_1529.jpeg ウズナックの民家に泊まった機会に地下にある核シェルターを見せてもらいました。
 核シェルターについてこれまで本やテレビの紹介で知ってましたが、実際に分厚い壁の前に立つと思っていた以上に威圧感がありました。シェルターの棚と冷蔵庫には非常時用の食糧が積まれていました。

 「永世中立国」とはここまで覚悟しての事なのかと素にショックを受けました。スイスは人口800万人、地理的に九州より一回り大きい面積で、その90%が山地ですので国土そのものが要塞かと思うのだが、ここまで覚悟して中立を守るとは見上げた精神です。まぁこれがスイスをスイスたらしめている「平和の代償」でもあります。
 シェルターに中で、この国防意識はいったいどこからくるのかと考えさせられました。たぶん彼らの遺伝子に山岳遊牧民族特有の縄張意識が強烈に働いているのかも知れません。彼らの国防意識の対象は政治的な「国家」ではなく、大自然の「国土」にあるのかと思います。
 これは私の観察までですが、彼らのナショナリズムは「愛国家」だけでなく「愛国土」に直結したものかと思います。自然は外的な対象ではなく彼らの心の中に内在していて、自然と人間との深い絆、自然との共生が彼らの内面に深く入り込んでいるよううにみえます。生命の原泉は自然からの賜物で、彼らの自然への感情は、キリスト教に裏打ちされた山岳信仰の宗教感情に近いのかと思います。自然の中に生きて美しい国土を守ることが遺伝子に刷り込みされているのでしょう。
IMG_1492.jpeg    (ウズナック教会のシンボル、白バラをもって山上に立つマリア)
 「アルプスの防人」として、自然と響宴して生かされ活きることが、スイス人の誇りでありアイデンティティーなのだと思う。アルプスの少女アイジがフランクフルトの都会に馴染めず、極度のホームシックからアルプスに回帰して再起したようにです。これからもこの美しい国は、スイス人によって守られて行く事でしょう。アルプスの防人に幸あれ。
 
 二人行けど 行き過ぎがたき秋山を
        いかにか君が ひとり越ゆらむ (万葉巻二)

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このページは、三休が2015年10月11日 00:54に書いた記事です。

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