2014年5月アーカイブ

天風哲理の地下水脈(1)

517Z9RXRJ5L._AA160_.jpg 朝の行修をやりながら何かいま一つもの足りなさを感じて来ました。いったい何かなと、長い間もやもやした気持でいました。
 今年3月に東京でマッサージ師が、私の背中を揉みはじめてすぐに、「もっとたくさん水を飲みなさい」とアドバイスされました。私は瞬時に、「そうか、これだ!」と、もやもやしていた霧が晴れ上がるようにストーンと納得が行きました。オーバーな表現になりますが、マッサージ師の言葉が天の声に聴こえました。こうした閃きは一つの悟りなのでしょう。
 考えれば私たちの体
は25%が個体、75%の水分で構成されてまして、水分が体重の60%〜65%を占めています。ですから水との共生は理にかなったことなのに、なぜ今までその真理に気がつかなかったのだろう。
 たしか天風師も飲水法に関して書いていたかと思い、アメリカに戻り即刻に調べましたら、なんと「錬身抄」の
「第九章、血液浄化とその補成心得」の「第一節、水の応用について」で225ページから28ページを割いて懇切丁寧に教示していました。
 私は1986年に本著書を読んでいまして、その後も数回読み返し、事あるごとに拾い読みしていきましたが、まったく迂闊なことに第九章を読み過ごしていました。自分の関心事項の精神面だけに目が行き心ここに在らずでした。「研心抄」ばかりに心が行き「錬身抄」を見事に飛ばしていました。

 ここが天風哲理を著書から理入した者と、身近かで陶薫を受けたお弟子さんとの大きな違いなのかと思います。しかし、天風先生も講演では飲水法に関して多くを語っていませんし、著書でも「錬身抄」くらいかと思います。また、お弟子さんたちのたくさんの著書の中にもありません。多少あっても「錬身抄」を越えた言及はありません。私自身も補導の先生方から聴いた記憶がありませんでした。あるいは飲水法など天風会員なら当り前の常識で、強いて語るに足らずの事なのでしょうか。

 少し長くなりますが「錬身抄」から引用しますと;
 「水の利用法には外面からと内面からの二つがある。水は生命維持に欠かせない重要なもので、生物に付与してくれた貴重な自然物」として九章では内面の飲水法に言及しています。
 「水を飲むことは健康維持に必要かつ有効です。水分の欠乏を招くと血液が濃厚になり、血管内に沈殿物を多くさせ、結果として血液を不純潔におとしめて健康を害する」、「血液を常に純潔にしておくことが大切で、それには通便を良好にするために血液の浄化に水が必要」になります。
先ず飲水による血液の浄化から入っています。ついで;
 「人間の肉体の約7割りが水である。すなわち3分2が水で3分の1が個体で組織されている。なぜこのように体内に水分が存在しているかというと、肉体組織の各細胞を活かすために常に多量な水分を必要としているからである。水は肉体組織の保持のために使用されると同時に常に体外へ排泄されている。ですから健康維持のために常に失われつつある水分を、注意深く補充するようにすること」として、飲水の必要性を力説いています。
 そして、一日に補給する水の量を、当時の尺貫法で説明しています
(1合=180ml、一升1.L
 「一日に排泄される水の量は、普通の人で五、六合、尿便で八合から一升、及び肺からの呼吸にともない三、四合、その他涙等で合計にして一升七合から二升の水分が排泄される(個人差と夏と冬の差異あり)。ですから間断なく失われる水の量だけ、是非とも十分に補給してやらねばならない」としています。
 なんと一日に二升の補給とは驚きを越えて衝撃です。
飲水法は;
 「水を飲用する際に一時に多量摂取するよりも、少量を一日に何回となく飲むのがよい。一番よい練習法は食後に一杯の水を飲むようにし、後は少しづつ飲むようにして習慣化させる事。さらには水の中には強力なエネルギーの活力があるからただ飲むだけでなく、飲む時に積極的な観念の自己暗示を行えばより一層の効果がある」ことを勧めています。
 さらにインドのヨガでは水を神の力が籠れるものとして「命の霊液」という例を引きながら; 
 「ヨガの哲学者は就眠の直前に必ず一杯の水を飲む、また朝起きると直ちに、一、二杯飲み、洗顔する事よりも重大な行事として励行している。毎食一時間または三十分前に必ず、一、二杯を口に入れる」と述べています。
 こうした教示は今の医学的見知からみましても全く遜色がありません。むしろこの著書が1949年(昭和24年)の時点に書かれている叡智に頭のさがる思いです。
 最近の医学から簡単に説明を加えますと、
人間の体が1日に排出する水分と補給水量は約:
     排出            補給
 呼吸によって排出 400 ml  1日の食事から水分 600 ml
 皮膚からの蒸発  600 ml  代謝燃焼水      200 ml 
 尿や便から排出  1300 ml   1日の必要補給水      1500 ml
  1日排出量合計  2300 ml = 1日必要入水量     2300 ml

 健康維持のために毎日1500ml(500ccのペットボトル3本+)の水分補給が必要になります。
 さてそこで一日1500
ml+の飲水法ですが、これは摂取水量に個人差がありますので、それぞれ自分に合った飲み方を習得して行くことになります。基本的な飲み方として、サントリー社の水辞典のサイトを参考にして書き進めます。
 http://www.suntory.co.jp/company/mizu/jiten/drink/dr_08_01.html

朝起床時に:
 寝起きに先ずコップ2杯〜500
ml(ペットポトル1本)これは慣れませんときついですが大切な補給となります。
 
朝起きた時の私たちの体は、寝ている間に皮膚や呼吸を通して水分を失い水不足に陥っている状態です。血液中のミネラル濃度も高くなっているため朝一番の水分補給は重要になってきます。
スポーツや活動時に:
 一昔前は運動中に水分をとると疲労が増すと言われていました。しかし運動中には大量の汗をかき、水分はもちろんナトリ
ムなどのミネラルも体から失われてしまいます。体重の2%の水分を失と軽い脱水症状に陥り、動作反応の低下や食欲喪失などの症状があらわれます。適切に水の補給をしないと熱中症や熱けいれんを引き起こしかねません。
入浴後に:
 入浴による発汗で体は水分を失っています。入浴後には水を補給をすることが大切です。
就眠前に:
 就寝前の水の補給も大切になります。睡眠中の水分不足による血液中のミネラル濃度の上昇を防ぐと考えられています。

 このような飲み方をすすめていますが、これは基本でして後は一日の排尿の量と色の濃度を見ながら、各自で自分に合った飲水法を工夫して行くことになります。
 しかし、多くの人はこの大切な事実を知らずに慢性水不足になっています。しかも、喉の渇きが水不足を知らせる最後のサインなのですが、その時にはすでに慢性脱水症が起きているとのことです。
 また「錬身抄」に遅れること43年、1992年にアメリカで100万部を越えたベストセラー
「病気を治す飲水法」<万病を予防し治す水の力を総解説>、医学博士・バトマンゲリジ著(イラン人)が、中央アート社から出版されていました。本書でも健康維持は初めに水ありき、体内からの痛みは水不足のサインとする水療法で、医療パラダイムの転換を問いかけています。
 天風会はなぜこうした重要な飲水法を、前面に出されて指導していないのか不思議に思えます。どなたかが指導なされているようでしたら、是非ともお教え願います。
 私は今頃になって水補給の大切さを知り、もっと早く知っていればと悔しい思いをしました。もっとも天風師ご自身も;
 「
現に天風も中年期に病弱に陥り、各種の療病手段や健康回復の方法を研究中、水に関する尊き消息を知った時、過去幾十年この至大至妙の恩恵を、空しく拒否していたという同様な自己の無智無理解な生活を、自ら悔悟しないではいられなかった。そしてその後の生活を、生命法則に則して実行し、今日の完全に近い健康を克ち得た」と、述べていることに救われます。

 以上、水の重要性と飲水法について書いてきました。これらを前提にして安定打坐法についての私論「天風哲理の地下水脈」に入りたく思います。(続)