2014年6月アーカイブ

天風哲理の地下水脈(2)

 人間の体は25%が個体を形成する細胞組織、75%が水分で構成されていて、成人の体重うち約60〜65%が水分で満たされています。この水の働きで血液の流れをよくし、全身に栄養素や代謝物を運び生命の機能を維持しています。
 体内60兆個とされる細胞に水分が行き渡らないと慢性水不足により細胞にたまった老廃物を排出できなくなり、代謝障害が生じてさまざまなトラブルの原因になってきます。体重の約2%の水分が失われただけで不快感があり、約6%不足すると頭痛や眠気、脱力感などで、情緒も不安定になると言われています。

 口から入った水は胃腸に吸収され、生命維持に重要な部分に供給されて行き、なかでも最優先に脳へ供給されて行きます。脳の85%が水分でして約1000億の神経細胞が密集し、血液の約2割りを消費しています。脳で産生された神経伝達物質は、水を媒体にして全身の末梢神経へ命令を伝えています。脳は睡眠中でも休まず活動してまして、体内の各部や外界からの情報処理を一手に引き受けていますので膨大なエネルギーを必要としています。脳が休まず働いているのに水補給が不足しますと脳細胞が脱水症状に陥り慢性疲労を起してきます。
 ですからヨーガでは古から「水は神の力が籠れる命の霊液」として摂取してきました。就眠の直前に必ず一杯の水を飲み、また朝起きると直ちに一、二杯を飲み、洗顔することよりも重大な行事として励行しています。さらに毎食一時間または三十分前に必ず一、二杯を口に入れています(錬身抄)。
 ヨーガにおける飲水法は、現代医学の見知からみましても理にかなっていて全く遜色がありません。
朝起きた時の体は寝ている間に皮膚や呼吸を通して水分を失い水不足の状態になっています。血液中のミネラル濃度も高くなっているため、朝一番の水補給が重要になっています。また、就寝前の水の補給も大切でして、睡眠中の水不足による血液中のミネラル濃度の上昇を防ぐと考えられています。
 しかし、多くの人がこうした水補給の大切さを知らずに慢性水不足になっています。しかも、喉の渇きが水不足を知らせる最後のサインなのですが、その時にはすでに慢性水不足が起きていますので、たえず水の補給が必要になっています。

 さて、そこで私の主張になりますが、天風哲理の教義をなさる時に、クンバハカ法と平行してそれを支える水の補給をもっと前面に押し出して教示なされたらいかがなものかと考えます。脳を水で満たし下腹に気を込めるというものです。飲水法は天風哲理を下支えする地下水脈をなしていると思います。
 
クンバハカとは古典サンスクリット語で「聖なる体勢、満たされた状態」を称し、ヨーガではクンバハカ体勢を「壷の中へ水をいっぱい入れた状態」と表現していますが、実際にもそうした感覚なのでしょう。
 朝の行修の時に脳が水不足の状態のままで行いますと、目覚めも悪く動作に敏捷性を欠き効果的でありません。やはり行修の前に500ccの水補給をして、血のめぐりやリンパ腺の流れを徐々に活発化させてから行うことをおすすめしたく思います。深呼吸で息を吐く時に水蒸気を排出しますので、その補給も必要になります。クンバハカや積極心だけでは水の補給ができないからです。
 また、安定打坐の時も脳内が水不足の状態ですと、頭の冴えと集中力を欠いてしまいます。ここはやはりみずみずしいスッキリした脳の状態で打坐する方がより効果的と考えます。水が体内で「満たされた状態」で、血液を浄化せしめて綺麗なオーラが放射されている時に、より深い打坐に入って行けることと思います。

 天から山にふり注いだ雨は、大地を潤し川から海へと流れ、再び雨となって山に還元しています。
人間もこの自然のサイクルの中で水と共生しており、体内の水が天然水と一体になって循環しています。水を飲むことは自然を飲むことでもあります。
 「天に行わるる如く、地にも行われんことを」でして、安定打坐により「心」を、宇宙霊と一体化せしめ、飲水により「身」を、宇宙の霊液と共生せしめてこそ、心身統一がより深く確かなものになって行くものと考えています。