一葉落ちて天下の秋を知る

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IMG_5891.JPG 司馬さんが本郷界隈に住んでいた樋口一葉を、自分は愛読者ではなとしながら紹介していたので読みたくなりました。
 明治の「坂の上の雲」を書いた司馬さんにとり、一葉の出口ない底辺の悲劇、貧困ニヒリズムは、たしかに司馬さん好みではない。貧困が生みだす悲劇、私もかつての台湾といまの中国農村の貧困が重ね合って読むのが辛くなる。太宰治のような甘辛でなく激辛です。高校時代に一葉読んだと思うのだが全く記憶にない、読んでたとしても理解できなかったと思う。読むのが辛くなるのは、その分だけ大人になったからなのだろう。
 今回読んだ理由は、中村天風も一葉と同じ本郷の丸山福山町に住み、同じ悪性の莽馬性結核を患い、一葉は死に天風は起死回生したこの時代の雰囲気を感じてみたかったわけで、その意味では収穫がありました。
 ふろくとして数十年ぶりに新潮文庫の紐に触れて懐かしかった。表紙のデザインもいい。今では文庫本の紐つきは新潮文庫だけのこだわりだそうです。便利でいいものですが、コストカットがその理由だとのことで「一葉落ちて天下の秋を知る」で、知の貧困はこんな小さなところから始まるのかと思う。

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このページは、三休が2017年8月11日 23:34に書いた記事です。

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