カルテット、人生のオペラ

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161243_1.jpg 5月からJALの国際便ビジネスクラスの内装が一新しまして、快適さとプライバシーを重視してかキューブの様な座席になりました。フラットにして寝られるのは良いのですが、狭苦しい四角いボードに囲まれて、外も見えなければ、隣の人も見えずに13時間余も閉じ込められると、いささか息苦しくなってきて気持のいいものでありません。
 ただモニターの画面が大きくなり、映画を楽しみにしている私には嬉しい改善でした。今回も「ジャックと天空の巨人」、新「ダイハード」や名作「フォーレスト・ガンフ」等、往復で8本も見てしまいました。
 中でも最も泣けて楽しめた映画は、ダスティン・ホフマンが75歳にして初めて監督した「カルテット、人生のオペラハウス」でした。日本で4月に封切りになった映画でして、英国のオペラ史に名を残し過去の栄光の舞台から引退した音楽家たちが集まる老人ホームでの物語です。老人ホームでかつてカルテットを組んだ四大歌手が再会を果たし、ドタバタ劇を繰り返しながらも老人ホームの経営を建て直すために再度共演するまでのお話しです。
 さすがダスティン・ホフマンの呼びかけでして、英国を代表するアカデミー受賞の名俳優陣と、音楽史に輝く名ミュージシャンたちによる超豪華キャストの競演というたいへん贅沢な映画でした。

 自分たちの時代は終わったが音楽は活きている、「弱虫だけが老いることを恐がる」。過去の栄光にいつまでも引きずらず老いを受け入れ、たとえひび割れた高音でもありのまま今の音声で歌を楽しもう、まだやれる、人生のクライマックスはこれからだ、「もう一度唄わせて」という老人パワーの映画でした。

 奇しくもこの7月、ニューヨークを中心に世界中で演奏活動をして、世界の冠たる巨匠となった、弦楽四重奏「東京クヮルテット」の老サムライたちが、長い演奏の日々を終えて幕を閉じるといいます。なぜだか二つの物語が八重奏になって響振してくる錯覚を覚えてしまった。

 花は華やかに咲くだけが最終の到達点でなく、咲いた後に「しほれ」ゆき、実となり地に落ちてまた芽生えることで、花の究極の美が永遠の流れとして受け継がれて行きます。花は優雅で美しいですが、去来の花として「しほれ」もまた美しいものとしたいものです(風姿花伝)。

 人生もまたしかり、「弱虫だけがしほれることを恐れる」というメッセージでして、熟年層にお薦め映画となっていました。

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このページは、三休が2013年6月21日 00:03に書いた記事です。

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