小英帝国

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IMG_3035.jpeg              (札幌フラワーカーペット2016)
 イギリスのEU離脱は世界史の転回点になると思うが、私は肯定的に捉えています。また日本の将来にもよい転回点になると見ています。
 この転回点はミクロ経済の為替や株価の動向でなく、マクロな文明の流れ、つまりグローバリズム VS ナショナリズムの相克として見て行くべきだと考えています。
 なぜEU離脱したかを論及すると一冊の本になってしまうのですが、すでにそうした本が出版されていました。この離脱を予言したかのような著書「グローバリズムが世界を滅ぼす」(文春新書)を、私は今改めて再読、熟読しています。なかでもエマニュエル・トッドと中野剛志両氏の小論が光ってまして、なぜEUを離脱したかの解答がここに記してありました。参考として是非ともの推薦本です。
 フランス人のトッド氏は、「ヨーロッパは今、かつての姿と逆のものになろうとしています。一つの覇権大国をいだく不平等な連合体になろうとしています。覇権大国はドイツであり、ドイツのための優秀な右腕となっているのがフランスです」、「ヨーロッパに期待しうる最善のことがユーロの崩壊であるということです。その崩壊は、直ちには世界によい結果をもたらさない性質のものです。ヨーロッパは死です。自ら首を括っている最中です」と、厳しい告発をしています。
 この著書でグローバリゼーションの新自由主義の拡散は、民主主義の危機であり、強いては国家の滅亡の危機と主張しています。この鋭い洞察に日本も他山の石とすべしです。
 イギリス人は過去の栄光がもはや未来を照らさない暗闇のなかで、かつての「大英帝国」が衰退し、このままEUグローバルリズムのなかで埋没して行くのか、それとも誇りある「小英帝国」として生き長らえるのか " To be, or not to be" ハムレット的選択でした。そしてEUから国家の主権を取り戻し「小英帝国」しての道を選択しました。
 しかし、国家の将来を決める最重要懸案を、安易に国民投票にしたことが大きな失政でした。これは指導者の劣化であり責任放棄でした。国民を二分するような最重要事項は、安易に投票に持ちこむ前に方向付けをして事前に処理すべきものです。それが政治というもので、そのために民主選挙で指導者を選んでいるのですが、まぁこのあたりが劣化する英国なのでしょう。
 ともあれ「小英帝国」への茨な道がこれから始まります。これが彼らの選択でした。エールをもって見守りたい。

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このページは、三休が2016年6月27日 09:01に書いた記事です。

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